岩本照が演じる“守る男”は、なぜこんなにも安心感があるのか

日本ドラマ

岩本照が演じる「守る男」には、不思議な安心感がある。派手な言動で周囲を引っ張るわけではない。だが、状況を見極め、判断し、必要な一歩を迷わず選ぶ。その積み重ねが、気づけば「この人がいるなら大丈夫だ」という感覚につながっていく。なぜ岩本照が演じる守る男は、こんなにも安心感を与えるのか。『恋する警護24時 season2』で辰之助が見せた佇まいから、その理由を紐解いていく。

アクションの先にあるもの──危険に踏み込む前に、すでに始まっている

『恋する警護24時 season2』で岩本照が演じた辰之助は、感情を大きく表に出すことも、言葉で信念を語ることもない。「任務なので」と公私をきっちり分け、目の前の状況に集中し続ける。その佇まいには一貫した芯があり、場面を重ねるごとに「この人がいるなら大丈夫だ」と思わせる力が、静かに積み重なっていく。

シーズン1で辰之助は、自身の親を殺した犯人を追いながら、警護という仕事の中で過去と向き合ってきた。警護対象だった里夏とは、互いを想いやりながら少しずつ信頼を深め、仕事の枠を越えた関係へと確かに歩みを進めていく。その姿勢は、辰之助が仕事と感情のどちらも雑に扱わない人物であることを、静かに印象づけている。

シーズン2では、配達員連続強盗殺人事件の容疑者・五十嵐の警護を任され、より緊張感の高い現場に立つことになる。私生活では里夏がイギリスへ留学し、物理的な距離が生まれるが、そのことによって辰之助の軸が揺らぐことはない。

岩本照といえば、SASUKE常連の肉体派で、Snow Manの中でもフィジカルの強さが際立つ存在だ。そのためアクションシーンに注目が集まりがちだが、辰之助という人物の信頼感は、実はアクションそのものよりも「動く前の瞬間」に宿っている。

裁判が終わり、五十嵐が警護の車に乗り込む直前の場面。不審な男を視界に捉えた辰之助は、その人物を目で追いながら、ほとんど間を置かずに無駄のない動きで警護車のドアを閉める。大きな動作はないが、危険を察知し、優先すべき行動を即座に選び取る判断が、そこにはある。また、五十嵐がホームセンターに寄りたいと要求した場面でも、その姿勢は変わらない。怪訝な表情を浮かべる同僚たちとは対照的に、辰之助は感情を表に出さない。ただ一瞬だけ間が生まれ、その短い沈黙の中で、寄り道によって生じるリスクを冷静に見極めているように見える。許容できるかどうかを判断したうえで、必要な対応を選ぶ。この、冷静さと判断の早さが、辰之助を信頼できる存在として際立たせている。

人質を取られ、刃物を突きつけられる緊迫した状況でも、辰之助の立ち位置は変わらない。周囲に焦りがにじむ中で、彼は無闇に動かず、相手の出方を静かに見据えている。感情に流されることなく、状況を悪化させないための選択肢を探し続ける姿が、場面全体に落ち着きをもたらす。

辰之助の動きは常に最小限だ。視線の配り方、立ち位置の取り方、動き出すタイミング。そのすべてが、「誰かを守る」ために最適な形として選ばれている。派手さはなくとも、判断に迷いはない。その積み重ねが、「この人は状況を把握している」という確かな信頼につながっていく。

岩本照が辰之助として体現しているのは、強さを誇示する守り方ではない。目の前の状況に対して、最善を選び続ける覚悟を、行動として積み重ねていく姿だ。その覚悟が言葉ではなく佇まいから伝わってくるからこそ、辰之助は自然と信頼を集める存在になる。岩本照が演じる「守る男」が頼もしく映る理由は、まさにそこにある。

完璧ではないからこそ、辰之助は信頼される

辰之助が与える安心感は、判断の的確さや冷静さだけで成り立っているわけではない。もし彼が、常に無表情で、感情の揺れひとつ見せない存在だったなら、ここまで人の心に残る人物にはならなかっただろう。辰之助が信頼される理由のひとつは、ふとした瞬間に覗く人間らしさにある。

たとえば、甘いものを前にしたときの表情だ。警護中は「任務なので」と私情を挟まない辰之助が、里夏からバームクーヘンを手渡された瞬間、思わず見せるくしゃっとした笑顔。その一瞬で、彼が感情を抑え込んでいるのではなく、必要な場面でちゃんとしまい込んでいるだけなのだと伝わってくる。仕事を最優先にするプロフェッショナルでありながら、感情を失っていない。そのバランスが、辰之助という人物を立体的にしている。

緊張感のある現場であっても、人としての揺れが消えるわけではない。湊が危険な状況に巻き込まれ、怪我を負った場面では、普段の辰之助からは想像できないほど動揺が表に出る。一瞬、判断よりも感情が前に出てしまう。その姿は、彼が冷静さだけで成り立つ存在ではないことを、はっきりと示している。

それでも辰之助は、感情に飲み込まれたまま立ち止まらない。動揺しながらも現場に戻り、やるべきことを選び直す。その過程が丁寧に描かれているからこそ、視聴者は彼を「危うい存在」ではなく、「信頼できる存在」として受け止めることができる。感情を持っているからこそ、その扱い方が問われる。その点で辰之助は、一貫して誠実だ。

完璧に見える人物よりも、どこかに揺れを抱えた人物のほうが、人は安心することがある。辰之助の場合、その揺れは決して弱さとして放置されない。仕事と向き合う覚悟によって、きちんと収められている。だからこそ、彼の人間らしさは不安ではなく、信頼へと変わる。

岩本照が辰之助として見せているのは、「感情を持たない守る男」ではない。感情を抱えたまま、それでも現場に立ち続ける守り方だ。その姿勢が、判断の的確さと重なったとき、辰之助は単なる優秀な警護員ではなく、「そばにいてほしい存在」として立ち上がる。人間らしさを失わないこと。それこそが、辰之助の信頼を揺るがせない理由なのだ。

辰之助は多くを語らない。それでも、視線の動きや立ち位置、ほんの一瞬の間から、「何を優先しているのか」が伝わってくる。感情を持たないわけではない。ただ、感情に振り回されず、現場に立ち続けることを選んでいる。その在り方が、静かな信頼を生む。

岩本照が体現しているのは、完璧なヒーロー像でも、自己犠牲を声高に語る人物像でもない。自分が引き受けると決めた責任を、最後まで手放さない「守る男」の姿だ。だからこそ、彼がそこにいるだけで、私たちは自然と安心してしまう。その感覚こそが、『恋する警護』が描いた辰之助という存在の、いちばんの説得力なのだ。

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