Snow Manの渡辺翔太が映画単独初主演を果たした『ゾク 事故物件』。“事故物件住みますタレント”という異色の役柄に挑み、恐怖と孤独、そして優しさを全身で表現する。中田秀夫監督が生み出す“静かな恐怖”の中で、渡辺翔太が見せた新たな表情とは——。本記事では、映画の見どころと彼の演技の魅力をネタバレありでレビューする。
『事故物件ゾク 恐い間取り』は現在、Prime Videoで見放題配信中!
▶ Prime Videoで今すぐ観る
映画『事故物件ゾク 恐い間取り』作品概要
- 作品名:事故物件ゾク 恐い間取り(ZOKU:The Haunted Rooms)
- 公開日:2025年7月25日(日本公開)
- 製作国:日本
- 監督:中田秀夫
- 脚本:保坂大輔
- 原作:松原タニシ『事故物件怪談 恐い間取り』シリーズ
- 出演:渡辺翔太、畑芽育、吉田鋼太郎、山田真歩、じろう(シソンヌ)、加藤諒、金田昇、諏訪太朗、佐伯日菜子、ますだおかだ、なすなかにし、河邑ミク、大島てる、松原タニシ ほか
- 配給:松竹
- ジャンル:ホラー/サスペンス/社会派ドラマ
2025年7月25日に公開された映画『ゾク 事故物件』は、松原タニシ原作の実話怪談をベースにした新作ホラー。監督は『リング』『スマホを落としただけなのに』などで知られる中田秀夫。主演は、Snow Manの渡辺翔太。アイドル活動で見せる繊細な笑顔とは一変、事故物件に住み続ける“ゾクッとする男”を体現している。
物語の主人公・桑田ヤヒロは、売れないタレント。事務所の企画で「事故物件住みますタレント」として次々と“いわくつき物件”に住むことになるが、やがて目に見えない恐怖に取り憑かれていく——。
『事故物件ゾク 恐い間取り』が描く“恐怖とリアリズム”
見どころ①|渡辺翔太、初主演で見せた“顔の演技”と感情の振れ幅
『事故物件ゾク 恐い間取り』の最大の見どころは、渡辺翔太の“表情の演技”にある。本作で彼が演じる桑田ヤヒロは、売れない芸人。
工事現場でアルバイトをしながら、夢を追って上京した青年だ。ようやくつかんだ初めての仕事が、まさかの「事故物件に住んでみる」という体験リポートだった。
序盤、テレビカメラを前に浮かれる姿はどこか無邪気で、「やっとチャンスをつかんだ」という高揚感に満ちている。だが、その笑顔が恐怖に引きつるまでに時間はかからない。夜、眠りについた途端に幽霊が現れ、ヤヒロは怪我を負う。恐怖の余韻が残る中でも、撮影は止まらない。渡辺翔太は、その“職業としての笑顔”と“人間としての怯え”を一瞬で切り替える。
中田秀夫監督は、彼の“顔の演技”を最大限に生かしている。アップのカットでは、まばたきや口角の動き、呼吸の浅さまでが物語を語る。セリフよりも沈黙で感情を表現する時間が長く、その繊細さがホラー映画としての緊張感を支えている。
渡辺翔太の魅力は、派手な演技ではなく、リアルな反応の積み重ねにある。怖がるでも叫ぶでもなく、「恐怖を理解しきれずに戸惑う」姿。観客はそこに共感し、ヤヒロと同じ目線で物語を体験していく。序盤の“夢に浮かれる青年”から、“現実を直視せざるを得ない男”へ。その変化を表情だけで見せきったことが、彼の俳優としての確かな進化を物語っている。
見どころ②|“静寂”ではなく“直球の恐怖”で攻めた中田秀夫監督の演出
『リング』や『スマホを落としただけなのに』などで知られる中田秀夫監督といえば、“音や間でじわじわと追い詰める恐怖”の名手という印象が強い。しかし『事故物件ゾク 恐い間取り』では、そうした静かな恐怖とは一線を画す、より直接的で衝撃的なホラー演出が際立っている。
ヤヒロ(渡辺翔太)が最初に入居する部屋では、怪奇現象は一瞬で始まる。眠りについた途端、何の前触れもなく幽霊が現れ、ヤヒロは怪我を負う。観客が“構える間もなく”恐怖が訪れるスピード感が、本作のトーンを決定づけている。恐怖が静かに忍び寄るのではなく、唐突に襲いかかる。その意外性が、かえってリアルな恐怖反応を引き出している。
一方で、恐怖と日常が交錯するシーンも印象的だ。女優の卵・春原花鈴(畑芽育)がヤヒロの部屋に遊びに来る昼間のシーンでは、
一見穏やかな会話の最中に“ありえない出来事”が起きる。ヤヒロのスマホが忽然と姿を消し、花鈴が探すために電話をかけると、
受話口から返ってきたのは——幽霊の声。
「早く帰れ、ブス」
という、あまりにも露骨で不気味な言葉だった。中田監督らしからぬストレートな演出だが、だからこそ“画面の向こうに幽霊がいる”という即効的な怖さがある。
また、この「昼の明るさの中でも恐怖が起きる」という配置が巧みだ。ホラーといえば夜を舞台にするのが定番だが、本作では光のある時間にも悪意が潜む。日常と非日常の境界が曖昧になり、観客の“安全地帯”を奪っていく。
中田秀夫監督は今回、あえて緻密な恐怖演出を封印し、“本能的にゾッとする瞬間”を積み重ねることで物語を進めている。それは、恐怖を「考えるもの」ではなく、「体感するもの」として突きつけてくる演出だ。従来の中田ホラーとは異なる、直球勝負の恐怖映画に仕上がっている。
見どころ③|恐怖の奥にある“人の優しさ”と、その歪み
『事故物件ゾク 恐い間取り』が他のホラーと一線を画すのは、単に“幽霊に襲われる怖さ”を描くだけではない点だ。そこに見えるのは、人の優しさが時に“恐怖を呼び寄せてしまう”という皮肉な構図である。
主人公・ヤヒロ(渡辺翔太)は、人を疑うことを知らないほどに優しい。恐怖の中でも、怯える花鈴(畑芽育)を気遣い、幽霊に対しても「悪意よりも、寂しさの方が強いのでは」と感じ始める。その姿は、霊を排除するのではなく、理解しようとする人間そのものだ。
しかし、その優しさこそが危うさでもある。藤吉社長(吉田鋼太郎)の言葉——「幽霊も、優しい人のところに寄って来る」は、温かいようでいて、どこか残酷だ。誰かを思いやるほどに、ヤヒロは“向こう側”に引き寄せられていく。
中盤以降、彼の周囲で起こる出来事は、単なる心霊現象ではなく、“人と人の境界が崩れていく”感覚に近い。ヤヒロの優しさが、次第に現実を侵食していくように見えるのだ。花鈴との交流もどこか不穏で、二人が同じ空間にいるのに、まるで“生者と死者”のような距離感が漂う。
『事故物件ゾク 恐い間取り』は、幽霊よりも、人の心の中にある“寂しさ”や“執着”のほうが怖いことを教えてくれる。渡辺翔太のまっすぐなまなざしは、そのすべてを包み込みながら、この物語を単なるホラーではなく、“人間の記録”として成立させている。
おわりに|恐怖のあとに残る、“リアルな渡辺翔太”
『事故物件ゾク 恐い間取り』の魅力は、恐怖そのものよりも、その中で人がどう“反応”するかを丁寧に描いている点にある。渡辺翔太は、幽霊に怯えながらも必死に日常を保とうとするヤヒロを、飾り気のないリアリズムで演じきった。
彼の表情には、恐怖と戸惑い、諦めと小さな希望が同時に浮かぶ。それは計算された芝居というより、カメラの前で素の感情をさらけ出したような生々しさだ。中田秀夫監督の直接的な恐怖演出の中で、渡辺翔太の“人間としてのリアル”が作品の重心を支えている。
ホラーでありながら、どこか静かな温度を感じるのはそのためだ。ラストの微笑みをどう受け取るかは観客次第。恐怖を体験した先に、彼という俳優の確かな輪郭が残る——その余韻こそが、この作品の一番の“ゾクッ”なのかもしれない。
『事故物件ゾク 恐い間取り』は現在、Prime Videoで見放題配信中!
▶ Prime Videoで今すぐ観る




コメント