『(LOVE SONG)』×「Gravity」──切なさと希望をつなぐ“もうひとつの物語”

邦画

(LOVE SONG)のためにOmoinotakeが書き下ろした主題歌「Gravity」。まるで “この曲が終わるまでが映画のラストシーン” であるかのように、物語の余韻を静かに、そして深く引き延ばしていく。カイとソウタの再会で揺れ動いた感情、その言葉にできなかった想い——そのすべてがこの曲の中でやっと語られるように感じるのだ。あまりにも映画の世界観に寄り添ったこのエンディングテーマの歌詞から、カイとソウタの関係性を読み解いていく。

カイとソウタを代弁する“感情の地図”としてのGravity

LOVE SONGを観たあとに「Gravity」を聴くと、不思議と カイとソウタの物語の一本線をなぞっていく感覚 に陥る。

それは、この曲が単なるエンディングテーマではなく、2人が過ごしてきた時間の“感情の地図”になっているからだ。歌詞に触れるたび、出会った日のときめきや、惹かれ合う気持ちの高まり、避けられなかった別れの痛み、離れても消えなかった想い、そして再会した瞬間にあふれ出した感情まで、2人が歩んできた時間が次々と心の中に浮かび上がってくる。

映像では描かれなかった“心の裏側”を、歌詞が静かに補ってくれるからこそ、「Gravity」を聴くという行為そのものが、2人の関係の軌跡をそっと追体験するような時間になるのだ。

「Gravity」というタイトルには、カイとソウタの関係を象徴するような二重の“引力 が込められているように感じる。ひとつは、ふたりが“再会してしまった”という事実そのものだ。外国で暮らすという選択は、カイにとって「もう会わない」という強い決意の表れだった。それでも結局、ふたりはまた同じ場所に戻ってくる。意図的に距離を置いても、環境を変えても、どこかで彼らを再び引き寄せる力が働いてしまう。この抗えなさこそが、曲名の「Gravity」をそのまま体現している。

もうひとつの引力は、想いの引力だ。6年という長い時間があっても、心の奥底に押し込めたはずの感情は消えなかった。再会した瞬間、しまいこんでいた“好き”という気持ちが溢れ出すように蘇る。触れたくても触れられなかった過去の感情が、抑えきれない形で引き寄せられていく。

ふたりを惹きつけたのは、偶然でも奇跡でもなく、離れても消えない力、逃れられない想い——それが「Gravity」だと感じさせる。

孤独の終わりと、未来の始まり——Gravityが照らすふたりの再生

「君がいない それ以外おんなじ世界 僕ひとり置き去りに回り続ける」

この歌詞は、カイとソウタの6年間を象徴するもっとも痛切な一節だと思う。けれどこの言葉は片方だけの感情を代弁しているのではなく、“ふたりそれぞれの孤独” を同時に描いている。カイは、自分の意志でソウタの前から姿を消した。愛していたからこそ離れた、という苦しい選択。彼にとっての「君がいない世界」とは、“ソウタの未来を守るために自分が消える”という、自分で選び取った喪失だった。その痛みは、誰にも気づかれないまま胸の奥に沈んでいた。

一方でソウタは、何も知らされずに突然カイを失った。理由もわからないまま、ある日突然いなくなる。置き去りにされたのは、むしろソウタのほうだ。世界は変わらず動き続けるのに、“自分だけがあの日のまま取り残されてしまった”ような感覚を抱えて生きるしかなかった。去ったカイと、残されたソウタ。選んだ痛みと、押しつけられた痛み。形は違っても、ふたりはどちらも「君がいない世界」に取り残されていた。だからこそこの歌詞は、ふたりの孤独を同時に照らし出す。

けれど、「Gravity」が胸を掴む理由は、孤独だけを描いているからではない。この曲には、痛みと並ぶようにしてそっと寄り添う“光の気配”が流れている。「Gravity」は胸を締めつけるような切なさを抱えながらも、どこかで必ず“希望の音”が息づいている。

哀しみに沈みきるのではなく、かすかな光をそっと差し込むようなメロディ。痛みと優しさが同じ場所に共存しているからこそ、
聴いていると不思議と、「それでも前へ進めるかもしれない」という気持ちが胸の奥に浮かび上がってくる。涙を誘う曲調なのに、絶望には落ちない。むしろ、ふたりの選んだ未来がそっと照らされていくような響きがある。この“悲しさと希望の同居”こそが、Gravityを唯一無二のエンディングテーマにしているのだ。

「遠い海へ沈んでく太陽の先にどうしてかな君が待ってる気がしたんだ 歩き出すよ過去よりも未来の方へ」という歌詞は、孤独に閉じ込められていたふたりの時間が、再会をきっかけに静かに、しかし確かに“未来へ向かい始めた”瞬間を描いている。映画で描かれたふたりの関係の変化が、この歌詞と自然に重なっていく。ただ再会しただけではなく、すれ違い、互いの想いが重なった夜、そしてまたすれ違い、そしてようやく本音に触れ合えたあの朝——。

お互いに正面から向き合うことが出来なかった心が、戸惑いながらもゆっくりと相手へ向かっていく時間。傷ついた過去を抱えたまま、それでも正面から向き合おうとする覚悟が芽生えていく過程。その一つひとつの瞬間が、この歌詞の行間に静かに溶け込んでいるように感じられる。ふたりが言葉にできなかった“揺れ”や“迷い”や“決意”が、メロディの中で淡い光となって響きはじめるのだ。

映画の余白を満たす音——Gravityという最後の語り手

「Gravity」を聴くと、ただ曲を聴いているだけなのに、カイとソウタの人生が走馬灯のように頭を駆け抜けていく。出会い、惹かれ合い、離れて、そしてまた向き合おうとする——そのすべての瞬間が、胸の奥をぎゅっと締めつけるような温度で蘇る。

この曲は、ふたりの物語を“補う”のではなく、物語そのものを完成させている。もしこの主題歌がなかったら、LOVE SONGのラストはきっと、どこか未完成のままだったと思う。言葉では語りきれないふたりの心の奥底を、「Gravity」はそっと照らし、その余白を満たしてくれる。

映画のラストシーンを観終えたあと、この曲が流れた瞬間に“ああ、この物語はここまで含めて一つなんだ”と静かに腑に落ちる。まるで、ふたりの感情の続きをメロディが引き取って語り始めるように。そして、曲が終わるころには、ふたりが選んだ道の先にある“静かな光”が、そっと胸の奥に灯っているのに気づく。それは、言葉では語られなかった物語の続きを、「Gravity」が確かに受け取ってくれたからだ。「Gravity」は、そんな特別な役割を担うエンディングテーマだと思う。

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